本記事ではブックメーカーで稼いだ後に発生する税金に関して、納税の必要性やプレイヤーが事前に知っておきたい情報を詳しく解説してみました。
ブックメーカーで得た利益は税金がかかる
ブックメーカーで利益を得た場合には税金がかかります。まずはどんな課税内容なのか、また具体的な計算方法などについて詳しくチェックしてみましょう。
税目は所得税・住民税
ブックメーカーの利益に対しては所得税と住民税が課税されます。所得税は所得金額に応じて税率が高くなる累進課税、一方で住民税は所得金額に関わらず10%です。
所得の種類は「一時所得」
ブックメーカーで稼いだ利益は、10種類ある所得種目のうち「一時所得」に分類されます。
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
競馬で稼いだ場合に一時所得として分類されることと同じです。
例外的に雑所得や事業所得として認められる可能性もある
ブックメーカーの利用方法次第では一時所得ではなく、雑所得や事業所得として認められる場合もあります。
例えば雑所得として認められるのは、入出金手段として仮想通貨を利用している場合です。
仮想通貨の取引に係る収入がある場合
ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となります。
仮想通貨のトレードで得た利益は雑所得として課税されるため、ブックメーカーの利益も一時所得ではなく、雑所得になる可能性があります。
またブックメーカーでの稼ぎが「事業的規模」と認められた場合は、事業所得に該当することもあります。しかし明確な基準はありません。
自分自身ではなかなか判断ができないという場合には、確定申告前に税理士に相談するなどしておきましょう。
ブックメーカーの利益の税金計算方法
ブックメーカーで生じた利益に対する税金の計算方法を以下のステップで紹介します。
利益額の計算方法
利益額は「1年間の入金額ー1年間の出金額」で計算します。
電子ウォレットで入出金した金額は気にせず、銀行口座に記録が残っている金額で計算をすればOKです。
例えば1年間の収支が月ごとに以下のような結果になっていたとします。
月 | 入金額 | 出金額 |
1月 | 10万円 | 50万円 |
2月 | 10万円 | 20万円 |
3月 | 10万円 | 0円 |
4月 | 10万円 | 100万円 |
5月 | 10万円 | 10万円 |
6月 | 10万円 | 30万円 |
7月 | 20万円 | 20万円 |
8月 | 20万円 | 0円 |
9月 | 20万円 | 100万円 |
10月 | 0円 | 0円 |
11月 | 10万円 | 50万円 |
12月 | 10万円 | 40万円 |
上記の場合、1年間に140万円を入金して、420万円を出金したということです。すると1年間の利益額は280万円(=420万円ー140万円)と計算することができます。
一時所得の計算方法
一時所得の計算式は以下の通りです。
所得の計算方法
一時所得の金額は、次のように算式します。
総収入金額-収入を得るために支出した金額(注)-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
(注) その収入を生じた行為をするため、または、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限ります。
それぞれの要素を分解すると、以下の通り整理できます。
- 総収入金額(1年間のブックメーカーからの出金額):420万円
- 収入を得るために支出した金額(1年間のブックメーカーへの入金額:140万円
- 特別控除額:50万円
よって計算してみると、一時所得の金額は230万円になりました。
ちなみに一時所得の金額が0円になる場合は、そもそも課税がされません。
つまり1年間にブックメーカーで稼いだ利益が50万円以下ならば一時所得の金額が0円以下になるため、所得税や住民税が課税されないということになります。
税額の計算方法
一時所得の税額は以下の計算式によって算出できます。
税額の計算方法
一時所得は、その所得金額の2分の1に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額を計算します。
要は一時所得の金額に2分の1を乗算した上で、他の所得とも合算した金額に応じた税率を掛け合わせるということです。
所得金額ごとの税額は以下の通り定められています。
例えば上記で紹介したケースでは一時所得は230万円でしたが、税額を計算する際にはさらに2分の1が掛けられるため、135万円ということになります。
そして別に給与収入が500万円あったとしましょう。すると1年間のトータル所得金額は635万円になるため20%の税率が適用されるということです。
さらに控除額も踏まえると最終的な所得税額は84万2500円、住民税額は43万500円、トータル税額は127万3000円になります。
かなり計算自体は面倒くさいものの、実際には自分自身で行う必要はありません。
国税庁の確定申告書作成コーナーでは、必要な数値を入力していけばコンピューターが自動的に計算を実行してくれます。
ブックメーカーでできる税金対策
ブックメーカーで稼いだ際、なるべく税金額は小さくしたいと考えている人がほとんどでしょう。脱税はもちろん違法行為ですが、合法的な方法で税額を小さく抑える「節税」は違法行為などではありません。
具体的にブックメーカーでできる税金対策(節税方法)として、以下の方法を紹介します。
それぞれの方法について、詳しく解説します。
ブックメーカーのアカウントに資金を残しておく
資金がブックメーカーのアカウントに残っていれば、課税の対象にはなりません。というのも銀行口座に着金した金額が課税基準になるためです。
仮にブックメーカーアカウントの資金が課税されるというように言われたとしても、そもそもブックメーカーは海外のサイトが運営しており、税務署が調査することはできません。
したがって実質的にブックメーカーアカウントの資金は課税対象外と考えることができます。
エコペイズなどの電子ウォレットに資金を残しておく
エコペイズやヴィーナスポイントなどの口座に資金を残しておくのも税金対策の1つです。
理由は上記と同じで、銀行口座に着金していない場合は課税対象外になるためです。電子ウォレットを運営しているのも海外の企業なので、ブックメーカー同様に税務署の調査の手が及ぶ心配はありません。
入金額を大きくして利益を圧迫する
入金額を大きくすると税負担額を小さくすることができます。なぜならブックメーカーの利益は1年間の出金額から1年間の入金額を差し引く形で計算されるためです。
減算する数値が大きくなれば、当然利益額も小さくなります。
所得税は所得金額が大きくなるほど税負担が重くなる「累進課税方式」を採用しているため、逆に所得金額が小さくなると、当然税負担額も小さくなっていきます。
所得控除や税額控除を活用する
既に紹介した通り、ブックメーカーの利益は単体で課税される訳ではなく、給与所得や事業所得などの他の所得と合算して課税される総合課税を採用しています。
したがってブックメーカーと関係ないところでも、所得控除や税額控除を活用すれば、税金額の負担を小さくすることが可能です。
所得控除や税額控除の方法としては、例えば以下のような方法が挙げられます。
所得控除 | 医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、配偶者控除、配偶者特別控除など全15種類 |
税額控除 | マイホーム取得、ふるさと納税、政府や認定NPO法人などへの寄付金など |
※表は左右にスクロールできます。
活用できる控除は積極的に活用することにより、少しでも所得税の税額を小さくすることができます。
電子ウォレット専用のプリペイドカードを発行してカード決済やATM出金を行う
電子ウォレットにある資金を銀行口座に出金せず、専用のプリペイドカードを使ってATMから出金するという手もあります。
例えばアイウォレットやタイガーペイならば、電子ウォレットからATM出金が可能です。
しかし、あくまでも銀行口座に足跡が残らないためにバレる心配がないというだけであり、かなり違法性が高い方法と言えます。
筆者としてはあまりおすすめできないものの、税金対策のためには手段を選ばないという場合には、電子ウォレットのATM出金オプションを利用してみるのも1つの手です。
ブックメーカーの税金に関する注意点
ブックメーカーの税金についてはネット上やSNS上で様々な口コミが見られます。中には間違った内容も少なくありません。
ブックメーカーの税金について正しく理解するためには、正しい情報を知っておく必要があります。
実際に申告書を作成するタイミングから納税完了まで、ノンストレスで手続きができるようになるために知っておきたい注意点を詳しく解説します。
「ベットで勝つ度に課税される」はウソ
多くの情報サイトでは「ベットで勝つ度に課税される」という内容が見られますが、正しくありません。あくまでも銀行口座に着金した金額が課税の対象になります。
そもそも毎回のベットの記録を取り続けることなど、できるはずもありません。
仮に毎回の勝利が課税対象になるとしても、そもそも税務署が細かい調査をすることはできないため、特に気にしなくてもOKということになります。
また競馬のイメージから「賭けが外れた際のベット額は経費計上できない」という情報も、結局税務署側が正確に調査できない以上は正しくないと言えるでしょう。
あまり難しいことは考えすぎず、とりあえず1年間の出金額と入金額だけをきちんと記録しておけば、確定申告の手続きに関しては問題ありません。
勝利金だけではなくボーナスやリベート、キャッシュバックなども含めて銀行口座に着金した金額がすべて課税
銀行口座への着金額が課税対象になるということは、ベットでの勝利金だけではなく、以下のようなものも課税対象に含まれることになります。
- 入金ボーナス
- リベートボーナス
- 損失時のキャッシュバック
- トーナメント賞金
- キャンペーン賞金
- ヴィーナスポイントのポイントバック
大きな資金をブックメーカーに投じているプレイヤーの場合、上記のような稼ぎだけで優に50万円を超えてくることも珍しくありません。
「ベットで勝つ度に課税」というのが正しくないのは、上記で紹介した勝利金以外の利益に課税できなくなってしまうためという理由もあります。
支払い調書などはブックメーカーが発行してくれない
確定申告時に添付する書類用にブックメーカー側に支払い調書の発行を依頼しても、対応してもらえません。基本的には自己責任となります。
確定申告の際に申告書とは別に何か書類を添付したいならば、エクセルやスプレッドシートなどを使って自作した報告書などを添付するようにしましょう。
学生でもブックメーカーで稼いだら確定申告&納税が必要
学生であってもブックメーカーで一定以上の利益を稼いだ場合には確定申告が必要になります。
実際に確定申告が必要になるか否かは、アルバイトでの給与所得、事業を営んでいる場合の事業所得などの状況によりけりです。アルバイト先が年末調整をしているか否かなどでも、確定申告の可否は異なります。
とりあえず「学生だから確定申告は不要」などとは考えることなく、ブックメーカーで利益を稼いだ場合には、保護者や専門の税理士などに相談してみるようにしてください
申告納税を怠るのは憲法違反なので要注意
納税は国民の義務です。つまり申告納税をする必要があるにも関わらず怠った場合には、当然憲法違反となってしまいます。もちろん脱税などにより、実刑を受ける可能性もあるでしょう。
サラリーマンや公務員などには確定申告について疎いという方も多いかもしれませんが、だからといって申告納税を怠ることは許されません。
ブックメーカーで稼ぐ以上は、必ず税金に関する知識も頭に入れておく必要があります。
ブックメーカーの税金に関するQ&A
本記事の最後に、ブックメーカーの税金に関してプレイヤーが知っておきたい事項をQ&A形式で解説しました。
Q1)確定申告をしてしまうと会社に副業がばれない?
副業がバレるのは確定申告をしたか否かではなく、住民税の徴収方法の選択により分かれます。
「普通徴収」を選択した場合は、住民税は納付書を使って自分で支払うことになるため、ブックメーカーで副業をしていることがバレる心配はありません。
一方で「特別徴収」を選択した場合は、会社で天引きされる住民税額が給料金額よりも大きくなるため、副業バレをする可能性があります。
したがって会社に副業がばれないようにしたい場合は、確定申告書作成の際に住民税の徴収方法に気を配るようにしましょう。
申告書の提出後に不安になった場合、4月下旬くらいまでに居住している役所の納税課に連絡をすると、住民税の徴収方法を変更してもらえます。
Q2)期限内に申告納税をしないとどうなる?
毎年3月15日の確定申告期限までに申告を済ませていなくても、期限後申告を行うことができます。
期限内に確定申告を忘れた場合でも、自分で気が付いたらできるだけ早く申告するようにしてください。この場合は、期限後申告として取り扱われます。
しかし期限後申告となった場合、本来の税額に対して高率の無申告加算税が科されるため、税負担がかなり大きくなってしまう点に注意が必要です。
どのくらいの無申告加算税が科されるかは、申告の時期や金額、能動的なのか受動的なのかなどによっても異なります。
きちんと期限内に申告納税を済ませておくことが、最大の節税対策と言えるかもしれません。
Q3)サラリーマンの確定申告が必要になるのは年額20万円の利益と50万円の利益どっちが正しい?
サラリーマンの場合、給与所得と退職所得以外の所得が20万円以上ある場合には確定申告が必要になります。
ブックメーカーの利益を一時所得に再計算する際に50万円の特別控除額が差し引かれることを踏まえれば、サラリーマンは年額70万円以下の利益ならば確定申告をする必要はないということです。
しかし後々面倒なトラブルになりたくないと考えているなら、50万円以上の利益を稼いだ時点で確定申告をしてしまうのも良いでしょう。
既に源泉徴収や年末調整が済んでいるサラリーマンなら、50万円程度の一時所得から発生する税金額など微々たるものでしかありません。
Q4)ブックメーカーの確定申告に際して何か書類の添付は必要?
ブックメーカーの利益を確定申告する際には、特に何も書類を添付しなくてもOKです。
サイトによっては「収支報告書を添付すべき」などと説明があることもありますが、筆者自身はこれまで何年も書類未添付で確定申告を行い、何もお咎めはありませんでした。
確定申告期間中の税務署は非常に忙しいため、一人ひとりの書類内容を細かく調査するだけの余裕もないのでしょう。
しかし取り扱いは申告先の税務署や担当者によっても変わる可能性があります。何か書類の添付を求められた場合には、自作の収支計算書などを添付するようにしてください。